GABは人気企業で実施されることが多く、SPIや玉手箱と並んで対策の重要度が高い適性検査です。出題範囲はシンプルながらも、どれも時間のかかる内容になっています。
この記事では、GAB対策を始める人向けに、基本と例題を網羅して解説していきます。実施企業と業界の例も取り上げているので、まだ志望企業が定まっていない人も必見です。
また、後半では科目別の詳しい対策法に加え、GAB用の練習方法もリサーチして紹介しています。
GABの能力検査では、言語・計数が必出です。また、テストセンター形式の場合は英語も追加で実施されます。
問題はどれも長文や図形を見て答える内容で、論理的な思考力が求められます。類似の適性検査であるSPIと比べても、苦手と感じる人が多い内容です。
1問が長めで時間がかかりやすくなっている上、時間制限はかなり厳しめです。じっくり悩んでいると簡単に時間切れになってしまいます。
また、語句の意味を答える問題やシンプルな計算問題などは出題されないため、解き方がわからないとボロボロになりやすいです。対策をしっかり行った人と不十分だった人で、差がつきやすい適性検査といえます。
GABの受検方法は3つあり、それぞれ名称が異なります。「GAB」だけの場合、企業が用意した会場で受けるペーパーテスト形式を指しています。
一方、テストセンターで受けるものを「C-GAB」、自宅のパソコンを使って受けるものを「Web-GAB」と呼びます。
C-GABでは英語が必ず出題され、それ以外の2形式では英語は出題されません。その他の問題内容は全形式で共通であり、個別の対策は必要ありません。
ただし、GABであれば紙の冊子、C-GABであればテストセンター会場のパソコンと、慣れない環境で解く必要があります。内容が同じでも、ただページをめくったりパソコンを操作するだけで時間は消費します。どの形式でもスムーズに取り掛かれるようにイメージしておきましょう。
GABは倍率の高い人気企業が実施していることが多い適性検査です。SPIよりも難しいとされているため、より高度な能力を持った人材を求める企業で用いられやすいのです。
商社やメーカー・インフラといった、伝統があり安定している企業では特に実施されやすい傾向にあります。
いずれも毎年多くの応募者が集まり、ESや面接も含めて高い水準に仕上げなければならない業界です。そのため、GAB対策だけに没頭できない点が、間接的にGABの難易度も上げているといえるでしょう。
言語 | ・長文読解の問題
・問題文が「合っている」「合っていない」「どちらでもない」の3択 |
計数 | ・主に図表の読み取り問題
・Web-GAB以外では暗算や筆算が必要 |
英語 | ・長文読解の問題
・問題文が「合っている」「合っていない」「どちらでもない」の3択 ・C-GABで必ず出題 |
性格検査 | ・質問に対して5段階で答える内容 |
【例題】
次の文章を読み、続く設問それぞれについて、以下のA、B、Cのいずれかに当てはまるか判断し、その記号を1つ選びなさい。なお、自分の価値観や常識、細かい言葉じりで判断しないでください。
A:本文の内容から明らかに正しい、または正しい内容が含まれている
B:本文の内容から明らかに間違っている、または間違った内容が含まれている
C:本文の内容からは、正しいか間違っているか判断できない
外国人旅行者にとって日本は不便な国だといわれる。しかし、実際はどうだろうか。公衆トイレは無料で提供され、レストランでは無料で水が飲める。便利であるとは絶対的な価値観ではなく、比較して初めて成り立つのではないか。私が日本の便利さに関して考察できるのも、異国を実際に経験し比較できるからに他ならない。すなわち価値観を検討する際には必ず比較という過程が必要となる。しかしながら比較から物事が語られることは意外に少ないのではないだろうか。
出典:ワンキャリア
GABの言語では長文読解の問題が出題されます。1つの長文に対して設問が4つあり、それぞれ共通の選択肢から解答していく形式です。解答時間は1問あたり30秒が目安であり、1つの長文につき2分程度と考えることもできます。
選択肢の内容は「正しい」「間違っている」「判断できない」の3つで固定されています。そのため、本文と設問以外は基本的に読まなくても問題ありません。
言語問題で注意したいのが、正しいかどうかは「長文の記述を根拠とする」という点です。一般的に正誤が明らかになっていないようなことでも、文中で正しいものとして述べられている場合は「正しい」が正解になります。
【例題】
上の図表を見て、以下の問題の答えを選びなさい。
【問題①】
A国の穀物輸出量はD国の穀物輸出量の何倍か?
【問題②】
A国の肥料輸出量を100とした場合、D国の肥料輸出量は何と表せるか?
【問題③】
輸出量全体に対する農機具の割合が最も大きいのはどの国か?
出典:就活の教科書
【問題③】
C国(9.1%)
計数では図表を読み取って問いに答える問題が出題されます。Web-CABは1問に50秒程度かけられるのに対して、C-CABは1問30秒以下が目安となっています。
問われるのは特定の項目の合計や差・倍率などが多いです。全ての項目が問題に関わるわけではないため、必要な数値だけを拾っていく観察力が求められます。
必要な計算自体は簡単なため、数学に苦手意識があっても問題なく解けるでしょう。計算力よりも、設問で問われていることや図表が表しているものを的確に読み取る力が重要です。
【例題】
Read the text and choose the best description for each of the question that follow.
A:The statement is patently TRUE or follows logically, given the information or opinions contained in the passage.
B:The statement is patently UNTRUE or the opposite follows logically, given the information or opinions contained in the passage.
C:You CANNOT SAY whether the statement is true or untrue, or follows logically, without further information.
The ice cream cone is said to have been invented by accident at the St. Louis Exposition of 1904. It was created through the collaboration between a waffle-maker and an ice cream. At that moment, a nearby waffle-maker offered to make cones by rolling up waffles. The two served cones containing ice cream. The new product became popular at the exposition — and worldwide.
問1 Lots of new industrial products were displayed at the St.Louis Exposition.
◯A
◯B
◯C
問2 The ice cream seller sold waffles instead of ice cream.
◯A
◯B
◯C
問3 The ice cream cones were made out of waffles.
◯A
◯B
◯C
出典:ワンキャリア
【解答】
本文では万国博覧会の陳列内容については触れられていないため、正誤の判断はできません。
アイスクリームの代わりにワッフルを売ったのではなく、ワッフルを丸めて作ったコーンにアイスクリームを入れて売ったため、設問文は間違いです。
アイスクリームコーンはワッフルを丸めて作られたため、設問文は正しいです。
英語は長文読解形式の問題で、C-GABでのみ出題される科目です。1つの長文に対して3つの設問があり、「正しい」「間違っている」「判断できない」から答えます。1問あたりの解答時間は25秒程度です。
基本的な問題構造は言語と同様で、「選択肢が固定」「正誤は本文に依拠する」の2点に気を付けていれば難しい内容ではありません。ただし、言語よりも解答時間が短いため、シビアな時間配分が求められます。
また、本文だけでなく設問文も英語で書かれているので、こちらを読み取る時間も考慮に入れる必要があります。1問に25秒程度使えますが、実際に長文の読み取りに使えるのは10秒程度と考えておきましょう。
【例題】
各項目に対して自分がどの選択肢に当てはまるかを選択してください。
<選択肢>
〇あてはまる
〇どちらかといえばあてはまる
〇どちらでもない
〇どちらかといえばあてはまらない
〇あてはまらない
出典:就活の教科書
性格検査は質問に対して「あてはまる~あてはまらない」を5段階で答える内容です。明確な正解はなく、自分の性格や考え方を素直に答えることが求められます。回答時間は20秒程度が目安ですが、ギリギリまで悩んで答えるような科目ではありません。
選択肢の中には「どちらでもない」という、悩んだ時に選んでしまいがちなものが含まれています。しかし、「どちらでもない」が多すぎると性格を正しく分析できなくなってしまうため、最小限に抑えましょう。
性格の傾向ははっきりしている方が企業に好まれやすいです。性格に良し悪しはないので、なるべく「あてはまる」か「あてはまらない」を選ぶようにすると良いでしょう。
言語問題は長文から設問という順で提示されますが、そのままの順序で読むのは効率が悪いです。長文の内容を全て頭に入れてから設問を解き始めても、途中で内容が抜けてしまいます。
先に設問文を読み、「長文からどんな記述を探せばいいか」を確認する解き方に慣れておきましょう。
こうした解き方は知っているだけでは中々活かせません。練習の段階で同様の解き方を使ってみて、自分が解きやすい読み取り方に合わせていくのがおすすめです。
また、当然ですが最低限の速読力も必要です。400文字の文章を1分で読み切れる程度には速読力を鍛えておくと安定性が高まるでしょう。
計数では、主に「表・棒グラフ・折れ線グラフ・帯グラフ・円グラフ」の5種類が図表として用いられます。種類によって取り扱うデータの特性や読み取り方が異なるので、それぞれの特徴を知っておくことが重要です。
表は扱うデータの項目数が多い時に使われやすい形式です。「A~Eの商品の値段・売上・発注数」といったデータとして用いられることが多いでしょう。必然的にデータの数も多くなるので、必要な数値だけ抜き出すことが特に重要になります。
一方、棒グラフと折れ線グラフは時間経過による変化を表すために使われることが多いです。縦軸が量・横軸が年や月などの時間を表すようなデータで頻出です。
棒グラフと折れ線グラフは表すものが似ており、2つを組み合わせている図表もあります。この場合、それぞれの軸がどのグラフに対してのものなのかを慎重に確認する必要があります。
また、帯グラフと円グラフは、どちらもデータの比率を比較するためのグラフです。具体的な数量はグラフの形状からはわからず、外側の注釈などを参照しなければなりません。
この2つのグラフでは、割合の多さで数量の多さが決まらないという点に注意が必要です。例えば「総量100の時に30%だった項目」と「総量200の時に20%だった項目」では、後者の方が数量が多くなります。
これら5つのグラフの違いをしっかりと理解した上で問題数をこなし、それぞれの読み取り方に慣れておくとスムーズに解答できるでしょう。
英語は難しい英語は用いられないものの、中学・高校レベルまでの語彙力が備わっていないと厳しいでしょう。
英語の長文は文章量が少ないので、意味が理解できるならそれほど難しい内容ではありません。しかし、少しでもわからない単語や熟語で悩んでいると、すぐに時間切れになってしまいます。
高校までの基礎的な英語を固め直し、「早く読めばいいだけ」という段階まで押し上げることが重要です。
大学受験で一度学んだとしても、数年空けば忘れている可能性が高いです。何度か英語の長文を読んでみて、抜けている知識があれば補完しておきましょう。
忘れがちなのが性格検査の対策です。能力検査の得点ばかり気にしていると、性格検査で失敗してしまう可能性があります。
自己分析を行い、自分の性格や考えを明確にしておきましょう。性格検査だけでなく、面接などの対策にも繋がる重要な行程です。
性格検査で特に悪い評価を受けるのは「矛盾している回答」です。自分を良く見せようとしたり、自分自身の性格を客観的にわかっていないと、「答えに一貫性がない」と判断されてしまいます。
完璧な性格というものはなく、人によって長所と短所があるのは普通のことです。企業からの評価は気にせずに、素直な回答をできるようにしておきましょう。
出典:Amazon
GAB対策の基本は参考書を使うことです。出題範囲の解説や練習問題が1冊にまとまっているので、順序立てて学習することができます。
GABは玉手箱やCABとセットになっていることが多く、GAB単体の参考書はほとんど販売されていません。「C-GAB」「Web-GAB」と形式を絞った内容の参考書もあるので、受検予定の形式と合ったものを選びましょう。
また、出版年度も確認しておくべきポイントです。年度が何年も前のものは情報が古い可能性があり、安心して対策を進められません。なるべく最新年度のものを買うことをおすすめします。
出典:App Store
参考書を使った勉強にはまとまった時間が必要になります。移動時間や外での空き時間も活用するためには、練習用のWebサイトや対策アプリの利用もおすすめです。
GABトレでは言語700円・非言語800円の月額料金でそれぞれのトレーニングコースを受けることができます。また、無料で簡易的な模擬試験を受けてみたい方には大人塾の利用も検討してみましょう。
対策アプリは数が少ないものの、GAB対策 言語とGAB対策 非言語の2つで必須科目を学ぶことができます。どちらも800円の買い切りタイプとなっており、長期間の対策にも向いています。
完全無料で充実した対策サービスを受けることは難しいですが、就活中の出費として1000円前後であれば安い方といえます。選考突破の可能性を少しでも伸ばしたいのであれば、有料サービスを利用してみましょう。
GABの科目 | 類似の科目がある適性検査 |
言語 | SPI・玉手箱・CUBIC |
計数 | SPI・玉手箱・CUBIC・ミキワメ |
英語 | SPI・玉手箱・CUBIC |
性格検査 | 多くの適性検査と類似 |
GABの各科目は、他の適性検査でもみられる問題形式になっています。既にSPIや玉手箱の対策をしたことがあれば、対策の手間を大幅に減らせるでしょう。
GABの能力検査は単に「言語・計数・英語」と表記されていますが、他の適性検査における「長文読解・図表の読み取り・長文読解(英語)」と同様の内容です。時間配分や解き方のポイントも似通っているので、他の適性検査の対策をそのまま活かすことができます。
ただし、「SPIや玉手箱は経験があるからGAB対策はいらない」と考えるのは危険です。必ず練習問題を一通り解いておき、細かな違いでつまずかないように備えておきましょう。
違う点 | 共通点 |
・出題範囲が固定
・暗記が通用しにくい問題 ・合否への影響が大きい |
・時間配分はほとんど同じ
・性格検査も重要 |
GABは出題範囲が固定で、問題の種類も各科目で1種類ずつしかありません。他の適性検査では、「言語科目に語句の意味や長文読解などが含まれる」という出題方法が主流です。
このことから、問題1つ1つに絞った対策がしやすいという点が大きな違いといえます。
しかし、GABで出題される問題は、他の適性検査では比較的難しいとされているものが多いです。対策がしやすいからといって、簡単に高得点を取れるわけではないという点には注意が必要です。
ほとんどの適性検査には、熟語の意味や公式を使った計算など「知っていれば即答できる問題」が含まれています。こうした問題は深く考えなくても正解できるので、得点源として扱われることも多いです。
一方、GABには暗記だけで即答できるような問題はありません。どれも問題文や図表をしっかり読み込まなければ答えられないようになっています。そのため、読解力・思考力・瞬発力の3つがバランス良く求められます。
ただし、計数で使う公式や英語の基本的な語彙力といった、最低限の知識は必要になります。これらの知識はGAB以外でも頻繁に求められるため、もし不足を感じたら早くから覚え直しておきましょう。
GABは適性検査の中でも難易度が高めであり、その分だけ選考で重視されることも多いです。
例えば、SPIは足切り用として選考初期にだけ実施され、それ以降の選考にはあまり影響しないこともあります。しかし、GABの結果は最終選考まで影響する可能性が高く、高得点を取っていれば有利に進めることもできるでしょう。
能力の高さを重要視する業界での実施が多いこともあり、他の適性検査よりも合否への影響は大きいといえます。
GABの問題数に対する時間設定は、余裕はないものの特段厳しいというわけではありません。同様の問題が出る適性検査と比べても、同程度の時間配分で解けるようになっています。
問題内容も似通っているため、全くの別物と感じることはほとんどないでしょう。
しかし、1問30秒程度が目安の長い問題だけが連続して出るのは、適性検査の中でも珍しい形式です。時間配分が同じでも、集中力が続かない可能性もあるので、GAB専用の練習は欠かせません。
多くの適性検査に含まれる「性格検査」ですが、その結果はどの企業でも重要な判断材料として扱われます。GABの性格検査の結果も、同様に重要度が高いです。
どんな仕事も人同士のやり取りが必要な以上、能力だけを評価して合否を決めるわけにはいきません。能力があり、性格が自社と合うと判断された場合に内定へと繋がるのです。
能力が高くても、性格が不明瞭であったり、矛盾した回答ばかりになっていれば落とされてしまうでしょう。能力検査の対策一辺倒では合格できないという点は大きな共通点です。
GABは出題内容の幅が狭いため、科目別にじっくりと対策を積んでいくことができます。しかし、難易度自体は高めに設定されているので、時間をかけた対策は必須です。
言語・英語は「長文読解」、計数は「図表の読み取り」と、どの問題も解答時間が長くなりやすい内容です。正しく解けるだけでなく、効率的に解けるようになっていないと、時間内に解き切ることは難しいでしょう。
GAB対策は参考書をメインに進め、隙間時間にWebサイトやアプリを使って補助するのがおすすめです。他の適性検査にも似た問題があるので、既にSPIや玉手箱を受けたことがある人は、それらの知識も活かしてみましょう。